効果的な顧客調査のための 6 つのステップ
- Masha Ostroumova, Enterprise Agile Coach
- 2023年11月24日
- 読了時間: 7分

アジャイルにおいて、私たちは常に顧客を中心に据えています。黄金のルールは、「製品が実際の顧客ニーズを満たしているなら、市場で成功する可能性が高い」ということです。優れたマーケティングや営業チームも重要ですが、平凡な製品をベストセラーに変えることはできません。
では、どうすれば製品が顧客のニーズや希望に合致することを確保できるのでしょうか?鍵は、顧客を理解することです。顧客の思考、問題、好みを深く掘り下げる必要があります。そして、ここで重要になるのが顧客リサーチです。これはアジャイルな製品開発において欠かせない要素です。
この記事では、顧客リサーチの一般的なアプローチを共有します。ただし、アジャイルは柔軟であることが重要です。自分のチーム、製品、会社にとって有効な部分を取り入れ、そうでない部分は捨ててください。それでは、始めましょう!
定量調査の力
新しい製品を開発する際、まず取り組むべきことは市場全体の状況を把握することです。人口統計、既存のニーズ、それがどのように満たされているのかといった数字を理解することが大切です。
たとえば、カフェを開業する場合、地元の統計を調べる価値があります。ターゲットエリアの平均年齢や収入層、近隣のコーヒーショップの状況はどうでしょうか?一方で、オンラインのスペイン語コースを提供する場合、興味を持つ人々の年齢分布や性別、収入層など、より広い範囲のデータが重要になります。
「定量調査」と聞くと膨大なリソースを必要とするイメージがあるかもしれませんが、実は手頃な方法もあります。オープンデータベース、市役所の資料、さらにはWikipediaも有用な情報源になり得ます。また、競合他社のオーディエンスを分析することも貴重な洞察を得る手段です。
既存の製品を持つ企業であっても、定量調査を軽視しないでください。顧客セグメントの見落としを発見し、新たな機会を掘り起こす助けになるかもしれません。
セグメンテーションの極意
市場全体を把握したら、次のステップはセグメンテーションです。これは、ターゲットとするオーディエンスを特定し、それを広くまたは狭く定義するプロセスです。重要なのはバランスです。あまりに特定のニッチに絞りすぎると深い価値を提供できる一方で、他の顧客を遠ざけるリスクがあります。一方で、ターゲットを広げすぎると、特定のニーズに響かず、誰にも深く訴求できない可能性があります。
例えば、「音楽好きのためのバー」を考えてみましょう。「グランジ風ポストパンク専用バー」といった非常に特定のジャンルを選ぶと、熱狂的なファンを得られる一方で、その範囲外の顧客は来店しません。一方で、「すべての音楽ファンのためのバー」として、ヒップホップ、クラシック、トランス、レゲエを次々と流すと、顧客に一貫性がなく感じられるかもしれません。
このステップを終えるころには、次のように明確なセグメント記述ができているはずです: 「25~34歳の若手プロフェッショナルで、都市部に居住し、エコフレンドリーな製品に情熱を持ち、月間可処分所得が1000~2000ドルである人々。」この明確さが、次のステップを進める基盤となります。
質的調査の深掘り
ターゲットセグメントを特定したら、次に彼らのニーズや希望をより深く理解する段階に進みます。最初のタスクは、このセグメントの多様なサンプルを見つけ、接触することです。SNS、個人的なネットワーク、街頭での会話などを活用してください。ただし、「選択バイアス」を避けることが重要です。特定の部門の同僚や近所の住民だけに頼らないようにしましょう。
次に行うべきことは、深掘りインタビューです。オープンな質問を設計し、自然な反応を引き出しましょう。この段階では、自分のアイデアを宣伝したり売り込む場ではありません。むしろ探偵のように、顧客の抱える問題が実在するものか、それがどの程度重要か、そして現状どのような解決策や代替案が使われているのかを探る場です。
参考になるリソースとして、ロブ・フィッツパトリックの『The Mom Test』をおすすめします。この本では、「親しい人が興味を示してくれるからといって、そのアイデアが市場で成功するわけではない」というギャップをうまく説明しています。最も深い洞察は、意外なところから得られることが多いものです。
顧客ペルソナの作成
顧客リサーチを進める中で耳にするキーワードの一つが「ペルソナ」です。これは、得られたインサイトをもとにターゲットオーディエンスを一人の架空の人物に集約したものです。ペルソナは「平均的な顧客」を象徴するものであり、顧客層を理解しやすくするための強力なツールです。
ペルソナを作るときは、以下の要素を明確にしましょう:
視覚的イメージ:ペルソナの顔となる画像を選びます(例:「30代半ばの技術好きな人」などで検索)。
基本データ:年齢、家族構成、収入など。
ライフスタイルの詳細:仕事の内容、趣味、週末の過ごし方、どのブランドの製品を好むのか(Apple派かAndroid派か、コーヒー派か紅茶派かなど)。
ペルソナは、特定の実在する人物に依存しないため、偏りを避けられる利点があります。このプロセスを通じて顧客の期待やニーズがより鮮明になり、プロダクトデザインが的確に進められます。
カスタマージャーニーのマッピング
次に、顧客の視点に立って、問題の発生から解決に至るまでの一連のステップを追いましょう。このマッピング作業は、製品に限定されず、競合他社の製品や独自の解決策も含めた全体像を描くことを目指します。
各段階で以下の問いを考慮してください:
アクション:顧客はその時点で何をしているのか?
感情:その時の感情はどうか?喜び、不満、無関心?
考え:何を考えているのか?「もっと簡単な方法がないのか?」といった疑問を持っているのか?
ジャーニーの中で特に「摩擦」が発生するポイント、つまりフラストレーションや不便を感じる部分は重要な発見です。これらは単なる課題ではなく、顧客体験を向上させ、競争優位性を得るための貴重な機会となります。
顧客ジャーニーを洗練し、できるだけスムーズで直感的な体験を提供することで、顧客満足度の向上を目指しましょう。
仮説の検証
顧客リサーチをもとに立てた仮説を検証する段階です。「顧客が何を求めているか」についての確信があっても、それを裏付けるためには実際の製品やプロトタイプを通じてテストが必要です。以下の3つの主要ツールを活用しましょう:
1. MVP (最小実行可能製品)
MVPは、製品の仮説を検証するための最小限の形態です。例えば、「映画チケット購入時にポップコーンを事前注文したい」という仮説がある場合、チェックボックスを追加するだけで十分です。フロントエンドではその機能を見せ、バックエンドで手動で処理する。この方法で需要があると確認できれば、正式な機能として拡張すれば良いのです。
2. プロトタイプ
プロトタイプは、製品の見た目や感覚を模倣するものですが、完全には動作しません。たとえば、ポップコーンのフレーバーやサイズを選べるページをデザインすることが考えられます。ただし、この段階では注文が実際に行えるわけではありません。これにより、デザインや提案内容が顧客に響くかどうかを確認できます。
3. A/Bテスト
A/Bテストでは、特定の仮説を直接比較して検証します。例えば、「ボタンの色がクリック率に影響する」という仮説がある場合、半数のユーザーには青いボタンを、残りの半数には赤いボタンを見せます。その結果を分析して、どちらが効果的かを判断します。ただし、一度に一つの仮説だけをテストすることが重要です。複数の要素を同時に変更すると、結果が複雑になり、正確な解釈が難しくなります。
顧客リサーチは一度限りの作業ではなく、継続的に行うべきものです。製品が進化すれば、顧客のニーズや好みも変化します。定期的なリサーチを取り入れることで、常に顧客と同じ目線に立ち、価値を提供し続けることができます。
製品開発の旅において、顧客リサーチは羅針盤のようなものです。その重要性を忘れず、顧客に寄り添った製品を作り上げましょう。
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